こんにちは、りんです。
2023年10月、このブログを立ち上げて1年を迎えました。
そこで、今回は「私はまさにこのことについて考え続けたい」というトピックについて再度整理をしてみようと思い、書いています。
私は現在2人の息子を育てながら心理職として働いています。(2023年10月現在育休中です)
同じ年代の子どもを育てる、中学・高校・大学の友人とも話す機会があるのですが、彼ら彼女らは心理職ではない仕事に就いています。
友人たちと話していても、仕事と家庭の両立にあたっては他の職種とは少し異なる心理職特有の難しさを感じることがあります。
では、なぜ私が心理職特有の仕事と家庭の両立の難しさを感じるのか、今一度考えてみたいと思います。
非常勤の掛け持ちで働いている割合が多い
まず、ほかの職種と比べて特徴的なのは非常勤で働く人の割合が多いということではないでしょうか。
筆者の中・高・大学時代の友人はほとんどが正規の職員。
しかも公務員が多いので、育休を3年取得できる人も多いです。
もちろん家庭の状況によってはパート勤務・専業主婦として頑張っている友人もいます。
一方で、臨床心理士として働く人は、非常勤で働く人が多いと言われています。
現在、私自身も「非常勤のみ」です
では、なぜ非常勤の掛け持ちが子育てのしづらさに繋がる可能性があるのか、もう少し分解してみます。
①保障が十分でない可能性がある
常勤であれば、有給休暇が取得できるなど福利厚生が充実しています。
基本的に社会保険にも加入できるので、出産後も産休に加えて育休が取得できます。
(産休までに1年間社会保険に加入していることが条件になります)
また、例えば妊娠中につわりや切迫早産等で出勤できないときには、傷病手当金も受け取ることができます。
一方で、勤務時間等の関係で社会保険に加入しない非常勤では、これらの保障が十分に受けられない可能性もあります。
ちなみに、私は非常勤ではあるのですが社会保険に加入させてもらえるよう、週30時間勤務をしています。
②保育園の入園基準を満たしづらい可能性がある
子どもを保育園に入れて働きたいとき、入園の激戦区ではポイント制度が導入されているところも。
各自治体は、保護者の勤務状況や現在の養育状況などから保育の必要性を基本指数として算出し、入園の可否を決めています。
決め方は自治体によって様々ですが、考慮される項目の中で注目されるのは勤務時間です。
例えば、東京都港区ですと以下のような形で計算されます。
10 港区保育利用調整基準
世帯の合計指数の高い方から入園を内定し、同一指数となった場合は21ページの優先順位をもとに調整し
ます。<世帯指数の算定方法>
保育園入園のごあんない 令和6年度版
父 基準指数 + 母 基準指数 + 調整指数 = その世帯の合計指数
例えば、就労の欄を見ると、父母の勤務形態によってこのように点数化されているのです。
非常勤では、勤務時間数が常勤と比べて少なくなる可能性が高く、それが子どもの保育園入園に影響する可能性もあります。
子どもが保育園に入っていないと仕事を探すのもままならないのに、仕事が決まっていないと保育園に入れない…
これってどうにかならないの…?
代替を頼めない業務がある
私は病院に勤務しておりカウンセリング業務も行っていますが、カウンセリングは基本的に担当者が固定されています。
したがって「今日は担当の○○がお休みなので、他のスタッフが対応しますね」と代替ができない業務なのです。
そのため、自分が子どもの発熱等で欠勤しなければならないときはカウンセリングの予約もキャンセルさせていただきます。
長男が2歳になる前くらいまでは頻回に熱を出したり、入院をすることも多かったです。
その際カウンセラー都合でカウンセリングをキャンセルさせていただくことも多く心苦しかったです。
また、私の職場は心理職は私一人なので心理検査等も基本的に自分しか実施ができません。
心理のスタッフが複数いる職場ではピンチヒッターをお願いできる可能性もありますが、私の場合はそれも難しかったです。
そのため、心理検査の予約もキャンセルせざるを得なかったです。
この部分は、働く領域によって違うのかもしれません。
仕事の時間以外に自己研鑽をする必要がある
子どもが生まれると日常のほとんどの時間は子育てに差し出す必要があり、必然的に自分の時間はなくなってきます。
職場にいるほうが、ご飯も座って食べられるしトイレも行きたいときに行けるのでは…⁉
一方で、心理職の文化としては、仕事の時間以外(休日や夜間など)に自己研鑽のために研修やスーパーヴィジョン(カウンセリングの指導)を受けたりすることが多いです。
特に臨床心理士は、資格の更新のために一定のポイントを更新する必要があります。
そのため、生活の時間の中のどこかで必ず研修の時間を捻出することが求められます。
子育てをしていると、自分の使える時間は本当にわずかです(しかも細切れ)。
自己研鑽をしたいけれど、そのための時間を確保するのも一苦労…
私自身、ここが一番悩ましいなと思いながら日々過ごしています。
心理職も“もがいている”
そんな、まさに「子育て中の心理職」である私が最近出会ったのが、こちらの本です。
若手の心理職の方々がそれぞれワークとライフを両立するためにどのように試行錯誤しているのか。
その葛藤やそれをしのぐための工夫について、非常に赤裸々につづってくださっています。
目次はこのようになっています。
第一部 ワーク・ライフ、心理臨床家としての成長
第1章 心理臨床家にとっての仕事と私生活――私たちは、もがいている
コラム1 若手をつなぐ、若手とつながる――ようこそ、若手の会へ
第2章 心理臨床家の発達――ワークとライフの体験を行き来する
コラム2 資格試験の苦労話
第3章 心理臨床家のルーツ――動機と臨床実践とのむすびつき
コラム3 育休とカップルとローン
第4章 人生経験と心理臨床の相互作用――同感と共感を巡る考察
第二部 さまざまな領域で働く若手臨床家のワーク・ライフ
第5章 大学教員のワーク・ライフ――多様性を包摂する社会に向かって
コラム4 留学とワーク・ライフ・バランス
第6章 企業で働く心理士のワーク・ライフ――家族との暮らしを支えてくれるものたち
コラム5 私たちに潜む差別的な感覚――臨床と社会、政治
第7章 家庭裁判所調査官のワーク・ライフ――法の下で家族に寄り添う
コラム6 「硬い」身体と、「関わる」身体
第8章 科学者-実践家としてのワーク・ライフ――明日からもがんばろう
コラム7 スーパーヴァイジーからスーパーヴァイザーへの役割移行
第9章 キンダーカウンセラーのワーク・ライフ――ある非常勤複数掛け持ち臨床心理士の日常
コラム8 教育分析――笑って見失うライフ
第10章 開業心理士のワーク・ライフ――心理士の可能性とその志の裏側
第11章 スクールカウンセラーのワーク・ライフ――お金・結婚・キャリアと学校臨床の相互作用
第12章 病院で働きながら個人開業もする公認心理師のワーク・ライフ――弁証法的な仕事と私生活のあり方
コラム9 配偶者からの声
第13章 セカンド・キャリアとしての心理職とワーク・ライフ――看護職や多職種から次の道へ
コラム10 文化的マイノリティ
第14章 ジェンダー・セクシュアリティの問題とワーク・ライフ――心理職3名の座談会を通して
Q&A 心理職を志す学生が若手の先輩に聞きたいこと
今読みたい、おすすめの一冊
編者あとがき
むすびに
目次だけでも興味深く、筆者は発売日前から予約していました!
「心理職は自己開示(自分の主観や情報を他者に公開すること)に慎重になるべき」という教育も受けたことがあった私にとっては、大変斬新な著書でした。
面接室を出ると、心理職も日々の生活の中で悩みながら過ごす一人の人間です。
社会に生きる一人の人間として、自分の生活と仕事をどのように両立させていくか。
それに対するヒントと、心理職として生き延びていくための勇気をいただける一冊です。
筆者は、表紙の裏にある “私たちは、もがいている” というメッセージに、背中を押されました
現在、ワークとライフのバランスに悩んでいる心理職の方、将来心理職として人生を歩んでいきたい方にお勧めです。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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